「ワクチンを接種した航空パイロットが大量死」はデマ

デマの内容

次のような画像を出して

例年と比べて2021年は（フライト中の）航空パイロットが大量死してる！

新型コロナワクチンを接種したせいだ！ワクチンやめろ！

と主張する人がいますが、デマです。

米国の業界誌「エアライン・パイロット・マガジン」にパイロットの死者数が掲載された。
2019年…1人
2020年…6人
2021年（9月までで）…111人！
これは、墜落事故などではありませんし、567でもありません。（新型コロナウイルス）だとしたら2020年にはすでに多くなるはずですから。💉（ワクチン接種）後の突然死だと見られています。

https://twitter.com/HRenpou/status/1469608144322142208

フライト中に亡くなったパイロット
2013: 1
2014: 0
2015: 1
2016: 2
2017: 28
2018: 1
2019: 1
2020: 6
2021:111

https://twitter.com/sofimari21/status/1469494973125267459

上記ツイートで示されているリストは、Air Line Pilots Association（ALPA、パイロット乗員組合）が発行する雑誌に掲載された「In Memoriam（追悼）」リストです。

Air Line Pilots Association

解説

結論

デマです。

上記ツイートで示されているリストは、以下の理由から、2021年の現役パイロットの死亡数が例年より多いことを示していません。

この追悼リストに掲載されているパイロットのほとんどが退職者です。すでに消滅した航空会社も掲載されています。つまり現役のパイロットはほとんど含まれておらず、「フライト中に亡くなった」パイロットが含まれているとは限りません（これだけの人数がフライト中に亡くなっていたら既に大きな社会問題になってるはずですね）。
この追悼リストは Air Line Pilot誌の毎号に掲載されているもので、過去の号に掲載された名前は新しい号では掲載されません。つまり、前年や前々年の欄に掲載されている名前は、当時掲載されなかった分の追記・補足なので、数としては少なくなります。

また、パイロットの死亡の原因がワクチンだとは一言も書かれていません。

ALPA（パイロット乗員組合）からの説明

この追悼リストが掲載されている雑誌を発行したALPAがツイートで次のように説明しています。

In every edition of Air Line Pilot magazine, we honor ALPA pilots — both active and retired — who have flown west. Based on verified information provided by their families, we reported the loss of more pilots in both 2019 and 2020 than in 2021. We report the losses in our magazine as we receive information from the families. The information in one magazine edition does not provide a complete report of the total losses for each of the listed years. We salute every member for their service and honor their memories.
Air Line Pilot誌では、毎号、亡くなったALPAのパイロット（現役も退役も）を称えています。遺族から提供された確実な情報によると、2019年と2020年の両方で、2021年よりも多くのパイロットが亡くなっています。私たちは、ご家族からの情報提供があったときに、本誌で死亡の報告をしています。本誌の1つの版で各年の全ての死亡者を網羅しているわけではありません。私たちはすべてのパイロットの貢献に敬意を表し、彼らの功績を称えます。

Air Line Pilots Association

すでに存在しない航空会社の例

追悼リストにはすでに存在していない航空会社が含まれています。

たとえば、

US Airways … 2015年にアメリカン航空と合併し消滅
Northwest … デルタ航空と経営統合し、2010年1月31日をもってデルタ航空となった
Eastern … 1991年まで運航していた航空会社
TWA … 2001年にアメリカン航空に吸収合併され消滅
Pan American … 1991年12月4日に会社破産し消滅した

などがそうです。

退職している人の例

こちらの記事を参考にして、退職している人物が含まれていることを確認してみます。なお、２０２１年１２月現在、パイロットの年齢の上限は６５歳～６７歳くらいのようです。

ICAOでは上限年齢の目安を65歳未満としているが、人手不足により航空会社から緩和要請があるため、日本では68歳未満に改訂されるなど国によって異なっている。また高齢になると身体検査が厳格化される国もある
Wikipedia – パイロット (航空)

Capt. Dan A. Friel

Mr. Dan Auburn Friel, age 81, passed away Thursday, September 5, 2019 in Northern Virginia.（中略）Alleghany Airlines hired him in 1969 as a copilot and after 27 years of service he retired as a captain.
https://www.legacy.com/us/obituaries/washingtonpost/name/dan-friel-obituary?id=1859161

Alleghany Airlines

アレゲニー航空（Allegheny Airlines）はアメリカ合衆国ペンシルベニア州ピッツバーグにかつて存在した航空会社。USエアウェイズ（US Airways）の前身である。

Wikipedia – アレゲニー航空

Capt. Lowry K. Bunn

Lowry “Kirk” Bunn
July 21, 1947 – July 14, 2021
Bellingham, Washington – Kirk Bunn, age 73, passed away in Bellingham on July 14, 2021. Kirk was a pilot in the US Navy and later flew commercially.
https://www.legacy.com/us/obituaries/bellinghamherald/name/lowry-bunn-obituary?id=13120199

Capt. Harold L. Sparry

DL Capt. Harold (Skip) Lee Sparry
the passing of retired Delta pilot Captain Skip Sparry, age 83. Captain Sparry joined Delta Air Lines 05-03-1965 and retired with Delta based DFW/030.
http://pcnflightwest.blogspot.com/2021/07/dl-capt-harold-skip-lee-sparry.html

２０１８年の追悼リスト

上記ツイートで示された追悼リストは２０２１年（と２０１７年）のもので、ツイートでは２０２１年だけパイロットが大量に死亡していると主張していますが、一例として以下の２０１８年の追悼リストを見るとそうではないことが分かります。

なぜなら、前述したように、追悼リストの前年や前々年の欄に掲載されている名前は、当時掲載されなかった分の追記・補足だからです。

参考記事

参考にさせていただいたツイート

デマ吐くな、妄想で、勝手に他人を殺すな！その業界誌に過去に掲載された故人は掲載されていないから、カウントされていない。年代は、遺族からの申告を集計しただけだぞ！すぐに削除しろよな
vino- 通報&お気軽氏

「フライト中」なんて真っ赤な嘘エアライン名をよく見てみろ 2021年に「Northwest」や「TWA」「Pan Am」なんてもう飛んでないんですけど昔、それらの会社に勤務していて、既にリタイアしたキャプテンたちがご病気（主に老衰）などで亡くなったものです 80代以上のかたがほとんどなんです RIP
きょう氏

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