次のような理由を挙げて「新型コロナ感染者は本当はインフルエンザ感染者だ!新型コロナは嘘だ!」と主張する人がいますが、それはデマです。
- 2020年にインフルエンザ感染者が急にいなくなって代わりに新型コロナ感染者が出てきたのは変だ!
- インフルエンザの検査をしてないじゃないか!
インフル感染者数の付け替えだとしたら数が少な過ぎる
簡単なところから説明しましょう。
インフルエンザの患者数は、2019年までは、例年約1千万人くらいでした。
ですが2020年のインフルエンザ感染者数は千人ほど。新型コロナ感染者数は61万人ほどです。
単にインフルエンザの患者を新型コロナの患者としてカウントしていると主張するとしたら、その感染者数が少な過ぎます。明らかに例年とは異なることが起きているのが分かります。
そしてこの数値の変化については「日本のみならず世界中で歴史上初めての大規模な感染対策をしたため、インフルおよび他の感染症の患者数が激減した。そんな状況下でも新型コロナは感染を広げている」と考えるのが自然です。
インフルと新型コロナでは症状が異なる
症状についても新型コロナはインフルエンザとは異なるいくつもの特徴を持っています。特に「息切れ」「嗅覚・味覚障害」は新型コロナ特有のものと言えます。
その他の特徴・性質も異なる
https://www.yonemorihp.jp/smahapi/genre-medical/info-medical/4082/
新型コロナは無症状感染が多い
新型コロナは無症状感染をする例が多いです。インフルエンザでは無症状感染はほとんどみられません。
新型コロナは感染力が強い
新型コロナの感染力は、インフルエンザよりも強いとみられています。これは無症状感染が多いことも関係しているものと思われます。
新型コロナは重症化が速い
新型コロナは、無症状・軽症の状態から、たった半日ほどで呼吸困難を伴うほど重症化することが珍しくなく、たった数日で死亡したという例も多くあります(必ずしも重症化するわけではありませんが)。
これはインフルエンザには無い特徴です。
新型コロナは致死率が高い
新型コロナの致死率は、インフルエンザの3倍以上です。
https://consumer.healthday.com/b-12-18-covid-19-is-far-more-lethal-damaging-than-flu-data-shows-2649775789.html
https://news.yahoo.co.jp/byline/kuraharayu/20210613-00242752/
インフルと新型コロナは遺伝子配列(ウイルスの種類)が違う
インフルエンザの感染症状はインフルエンザウイルスによって起こされます。新型コロナの感染症状はコロナウイルスの一種である SARS-CoV-2 ウイルスによって起こされます。
それぞれ遺伝子配列や性質が異なる別のウイルスです。
https://www.saiseikai.or.jp/feature/covid19/influenza/
インフルの検査をしてないから信じられない?
「医師会がインフルエンザの検査をするなって言ったから検査してないだろ!インフルエンザ患者が本当に減ったなんて分からないだろ!」と主張する人がいますが、それは間違いです。分かります。
日本医師会の通達の内容
医師会の通達(オリジナル)はこれですね(2020年3月11日)。
https://www.med.or.jp/dl-med/kansen/novel_corona/2019chi_461.pdf?
以下はいくつかのサイトに掲載された医師会の通達の内容です。
https://www.aisakura.com/114764.html
https://www.asahi.com/articles/ASN3D439YN3CUTFL00H.html?iref=pc_ss_date_article
「インフルエンザ「検査しないで」と日本医師会が異例の通知 なぜ?インフルエンザの症状が出たらどうする?【専門家解説】」
https://www.ntv.co.jp/news_covid19/static/20200316_01.html
「医師会がインフルエンザの検査をするなって言ったのは、インフル感染者を新型コロナ感染者だと偽るためだ!」というデマも流れましたが、全然違います。
上の記事に書いてある通り、次のような理由によるものです。
- 「インフルエンザなどの検査のために検体を採取する際に新型コロナウイルスに感染する可能性があるため、検査をせずに臨床診断によって治療薬を処方する」
- 「防護具が今、手に入らない。迅速検査は難しくなってきている」
- 「医療機関が防護具を用意できている場合は検査可能」
- 「北海道で医師が診察した患者が、後になって新型コロナウイルス感染が分かり、その後医師の感染も確認される事例があった」
- 「インフルエンザの流行が終息しつつあると認識しており、そのことも考慮した」
検索キーワード:検査しない 検査するな
医師会が「インフルの検査を控えて」と通達を出したのはインフルエンザの収束期
以下は5年分のインフルエンザ患者報告数のグラフです(定点医療機関当たり。東京都感染症情報センターのホームページより)。
青い線に注目してください(2019年9月~2020年9月の線)。医師会が通達を出したのは2020年3月11日なので、そのときインフルエンザの流行はすでに収束期に入っていたことが分かります。インフルエンザが4月から5月にかけて収束するのは毎年同じ傾向ですからインフルエンザ患者数の統計にさほど大きな影響を与えてはいません。
では2020年の新型コロナの感染者数の増減はどうかというと次のようになります。インフルエンザ収束後の4月中旬に最初のピークを迎え、7月後半に向けて2度目のピークを迎えています。インフルエンザの感染者がこんな増え方をしたことはありません。この感染者が本当はインフルエンザの感染者だという主張は無理があります。
オーストラリアの状況
世界の国々でもインフルエンザを始めとした感染症の感染者の激減が伝えられていますが、たとえばオーストラリアでは、2020年の前半からきちんとインフルエンザ感染者の調査をしているにも関わらずインフルエンザの感染者数が激減していることが知られていました。
クイーンズランド州で最も大きな臨床検査会社が出している感染状況のデータでは、2020年の3月から6月までのA型インフルエンザの感染者報告数は75人。去年(2019年)の同じ時期は3179人ですから、昨年比で約2.4%でした。
なぜインフルエンザがこれほど少なかったのか、公式な見解はありませんが、social distance, stay home and wash handsを多くの人が実行したこととマスクを着用したことが、COVID-19と同時にインフルエンザも予防したのだと思います
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/t344/202012/568042.html
多くのインフルエンザ検査が行われているにも関わらず、検出されていないことがわかります
https://www.kawaclinic.com/blog/116.html
国立感染研のインフルエンザウイルス分離・検出報告数
国立感染症研究所のインフルエンザウイルス分離・検出報告数(2016/17~2020/21シーズン)も、2020年のインフルエンザ感染者数の激減を反映しています(2019年比)。
https://nesid4g.mhlw.go.jp/Byogentai/Pdf/data2j.pdf
日本でもインフルと新型コロナの同時検査体制を整えている
日本でも2020年の10月頃から(インフルエンザの流行期を迎える前に)、インフルエンザの検査体制を強化するよう通達が出ています。町医者を含めてすべての病院で検査可能というわけではありませんが、検査可能な病院が増えています。
「次のインフルエンザ流行に備えた体制整備について」(2020年9月4日)
https://www.mhlw.go.jp/content/000667888.pdf?
「季節性インフルエンザ、COVID-19流行を踏まえた発熱患者受け入れ体制(診療・検査医療機関)について」(2020年10月13日)
http://www.nagasaki.med.or.jp/main/2020chi_353.pdf
マルチプレックスPCRでインフルエンザと新型コロナを同時に検査できますし、同時検査可能な検査キットを保険適用しています。
「唾液を検体に、新型コロナとインフルエンザを迅速鑑別できる検査方法を保険適用―中医協総会(1)」(2020年11月11日)
https://gemmed.ghc-j.com/?p=37123#i
検索キーワード:インフルエンザ検査してない