デマの内容
次のニュース記事を引用して
新型コロナワクチンで作られるスパイクタンパク質は体にダメージを与える!ワクチンは危険だ!
と主張する人がいますが、デマです。
「ワクチンでも作られるスパイクタンパク質が単独で体にダメージを与える可能性」(2021/7/31)
この記事では、東邦大学名誉教授・循環器専門医・東丸貴信氏の話として、次のように説明しています(抜粋)。
最近の研究では、ウイルスとは関係なくスパイクタンパク質だけでも体にダメージを与えることがわかった。
「米国のソーク研究所の報告では、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質を単独で感染させたマウスに、肺と動脈の炎症が確認されたといいます。スパイクタンパク質がいくつものサイトカインを放出し、血管や臓器に炎症を引き起こすと考えられています。
となると、新型コロナワクチンにも懸念が生じる。ワクチンはわれわれの体内に人工的にスパイクタンパク質を作り出すからだ。
mRNAが作るスパイクタンパク質やワクチン成分に炎症や臓器障害を起こすリスクがある以上…
あくまでも可能性の話としていますが、米国のソーク研究所(Salk Institute for Biological Studies)の報告を根拠として、「ウイルスのスパイクタンパクが体にダメージを与えるのだから、新型コロナワクチンによって作られるスパイクタンパクも危険ではないか?!」という説です。
結論
東丸氏が根拠としたのは「米国のソーク研究所の報告」ですが、そのソーク研究所および独立した専門家の両方が、ワクチンによって作られるスパイクタンパクの危険性を否定しています。
詳細
この記事で言及されている「米国のソーク研究所の報告」というのがどれのことなのか、ソースが記載されていませんが、記事に「新型コロナウイルスのスパイクタンパク質を単独で感染させたマウスに、肺と動脈の炎症が確認された」と書かれていることから、おそらくこれのことだろうと思われます。
The novel coronavirus’ spike protein plays additional key role in illness(2021/4/30)
the researchers created a “pseudovirus” that was surrounded by SARS-CoV-2 classic crown of spike proteins, but did not contain any actual virus. Exposure to this pseudovirus resulted in damage to the lungs and arteries of an animal model—proving that the spike protein alone was enough to cause disease. Tissue samples showed inflammation in endothelial cells lining the pulmonary artery walls.
研究者たちは、新型コロナウイルスの従来のスパイクタンパク質の冠に囲まれた「疑似ウイルス」を作成しました(実際のウイルスは含まれない)。この疑似ウイルスへの曝露は、実験動物の肺と動脈に損傷を与えました。これは、スパイクタンパク質だけで病気を引き起こすのに十分であることを証明しています。組織サンプルを調べると、肺動脈壁の裏の内皮細胞に炎症が確認されました。
そして、この研究結果を曲解したデマの拡散が確認されており、この研究結果を発表したソーク研究所および独立した専門家の両方が、新型コロナワクチンによるスパイクタンパクの危険性を否定しています。
以下は AFP Fact Check「Posts misrepresent US study on dangers of coronavirus spike protein」からの引用です。
The institute’s study looked at how the spike proteins in SARS-CoV-2 — the virus that causes Covid-19 — damage cells in a person’s vascular system.
ソーク研究所の研究では、新型コロナウイルス(新型コロナを引き起こすウイルス)のスパイクタンパク質が人の血管系の細胞にどのように損傷を与えるかを調べました。
The misleading posts misrepresent the implications of the study for the safety of Covid-19 vaccines.
SNSの投稿は、新型コロナワクチンの安全性に対する研究の意味を誤って伝えています。
The Salk Institute’s study concluded that Covid-19 vaccines are an effective and safe way to protect people from the virus.
ソーク研究所の研究では、新型コロナワクチンは人々をウイルスから保護する効果的で安全な方法であると結論付けています。
The study’s last sentence says that when someone receives a Covid-19 vaccine, it “not only protects the host from SARS-CoV-2 but also inhibits [spike protein] imposed endothelial injury”.
この研究論文の最後の文では、新型コロナワクチンを接種すると「新型コロナウイルスから体を保護するだけでなく、[スパイクタンパク質]による内皮損傷も抑制する」と述べています。
A Salk Institute spokesperson told AFP the spike proteins in Covid-19 vaccines are safe because they only remain in a person’s arm muscle for a short period.
ソーク研究所のスポークスパーソンは、新型コロナワクチンのスパイクタンパク質は人の腕の筋肉に短期間しか留まらないため安全であると AFP に語りました。
“The spike protein in the coronavirus behaves differently from the spike protein in vaccines”, the spokesperson said.
「コロナウイルスのスパイクタンパク質は、ワクチンのスパイクタンパク質とは異なる振る舞いをします」とスポークスパーソンは言いました。
--その他の専門家の話--
Experts told AFP that Covid-19 vaccines do not produce harmful levels of spike proteins.
専門家は AFP に、新型コロナワクチンは有害なレベルのスパイクタンパク質を生成しないと語りました。
Peter Murray, professor of immunology at the Max Planck Institute for Biochemistry, told AFP that Covid-19 vaccines produce far fewer spike proteins than SARS-CoV-2.
マックスプランク生化学研究所の免疫学の教授・ピーター・マレーは、新型コロナワクチンで作られるスパイクタンパク質の量は新型コロナウイルスが作るスパイクタンパク質よりもはるかに少ないと AFP に語りました。
“The spike protein components of the vaccine are not produced in the same amounts as a normal viral infection (probably a million times less),” he said.
「ワクチンのスパイクタンパク質の成分は、通常のウイルス感染時と同じ量ほどは生成されません(おそらく100万分の1)」と彼は言いました。
Annette Beck-Sickinger, professor of biochemistry at Leipzig University, said spike proteins are only created on the surface of the muscle cells when a person is vaccinated.
ライプツィヒ大学の生化学教授であるアネット・ベック・ジッキンガーは、人がワクチンの接種を受けたとき、スパイクタンパク質は筋細胞の表面のみに生成されると述べました。
“After the vaccination there are no free spike proteins meandering through the body and destroying our blood vessels,” she said.
「ワクチン接種によって、体内を巡って血管を傷つけるような遊離スパイクタンパク質は作られません」と彼女は言いました。
関連記事
ソーク研究所が発表した論文についてはこちらをご覧ください。